分析のための機械学習とは
Barry Mostert |Oracle Analytics、プロダクト・マーケティング担当シニア・ディレクター|2023年1月31日
分析と機械学習(ML)は数十年前から存在していましたが、機械学習は関連する課題のために利用が制限されていました。MLはプロセッサを大量に消費し、専門的なスキルとツールが必要で、幅広く普及してはいませんでした。しかし、クラウド・コンピューティングの登場により、より多くの組織が機械学習の実行に必要な規模の処理能力に低コストで容易にアクセスできるようになりました。また、スマートフォンやラップトップの強力な処理機能により、ほぼ誰でもMLを使った分析にアクセスおよび利用できるようになり、十分な情報に基づくデータドリブンな意思決定が可能になりました。
分析の定義
アナリティクスは、データ内の重要なパターンを検出、解釈、および伝達するプロセスです分析は、さまざまなデータ・ソースから意味のあるインサイトを生成することを支援します。ビジネス・アナリティクスは、データから得られるインサイトを活用して、売上の増加、従業員の離職率の低減、配送ルートの最適化など、組織の成功を支援するビジネスの改善をもたらす、十分な情報に基づく意思決定を行うことに重点を置いています。
機械学習の定義
機械学習は人工知能(AI)の応用であり、コンピュータが明示的にプログラムされることなく自動的に学習し、経験に基づき改善することを可能とします。MLは、データにアクセスし、それを使って自ら学習し、推論、推奨、予測を行うモデルを開発する人により成り立っています。これらのモデルのトレーニング・プロセスは、大量の観測データや履歴データのフィードから始まり、プロセッサ集約的なコンピューティング・リソースが必要となります。トレーニングしたモデルを新しいデータ・セットに適用することで、データドリブンなインサイトを見出すことができます。
分析のための機械学習の定義
分析のための機械学習とは、ビジネス成果を向上させる意思決定を行う目的で、MLアルゴリズムを使用してデータの評価とインサイトの発見を行う分析プロセスを支援するプロセスです。
分析のための機械学習は、2通りの方法で分析を支援します。
- 1. 分析ドリブンなインサイトの提供: MLが生成する結果、つまり予測分析は、データから導き出され、(人間の経験に基づくものではない)分析ドリブンであるため、先入観が軽減されます。分析のための機械学習は、探そうと考えない限り決して見つからないようなデータの異常値や傾向を特定することを支援します。クラウド・コンピューティングの力により、MLは、従来のML以外のアプローチでは不可能であった、より多くのシナリオを考慮して質問に答えることができます。
-
- 2. アナリストの生産性向上: 最新の分析プラットフォームに実装されたML機能は、アナリストがデータを取得してから意思決定するまでの時間を短縮することを支援します。このようなプラットフォームに組み込まれた機能は、データ・セットを自動的に分析し、コメント付きのコンテキストに沿ったビジュアライゼーションを生成することができ、アナリストがデータ・ストーリーを迅速に構築できるよう支援します。さまざまなMLアルゴリズムを自動的にテストし、アナリストがユースケースに最も的確なモデルを見つけられるように支援するAutoMLも、アナリストの生産性を高めるツールに数えられます。
機械学習を分析に用いる理由
機械学習を伴わない分析は、人間のアナリストによる分析の作成、インサイトの発見、その解釈に基づく推奨によって成り立っています。結果はアナリストのプロフェッショナルとしての経験と意見の影響を大きく受けます。
分析に機械学習を使用すると、主に2つの方法で分析プロセスが改善されます。
- 1. MLは、従来の分析だけでは気づかなかったパターン、傾向、相関関係を特定することで、従来の分析を強化します。これらのインサイトや推奨は、提供されたデータのみに基づいており、人間の直感、経験、先入観の低減を目的としています。
-
- 2. MLは、データ・セットの自動的な評価、発見内容の視覚的な推奨、データの準備と充実をより迅速に行うための推奨などにより、意思決定者の分析プロセスの効率化を支援します。このような機能は、MLにより得られた分析ドリブンなインサイトをダッシュボードに迅速に入力することで、意思決定までの時間を短縮します。
分析におけるMLの使用は要件ではなく、適切な場合にのみ使用することが必要とされます。適切な方法でMLを用いて分析を拡張することは、既存の意思決定プロセスを強化します。たとえば、新しいデータ・セットを扱う場合、MLを使用してデータを自動的に分析し、データから得られたインサイトをテキストによる説明およびビジュアライゼーションとして提供することができます。
オラクルの分析プラットフォームにおける機械学習の5つの活用方法
優れた分析プラットフォームは、一般的に使用されるアルゴリズムやそのチューニング法を理解している上級者ユーザーから、データ・セットにMLを適用するためのシンプルでコーディング不要のエクスペリエンスを求める人まで、あらゆるレベルのユーザーを対象とした機械学習機能を提供します。
分析ドリブンなインサイトをワンクリックでデータストーリーに追加します。
機械学習の経験がほとんどない、またはまったくないユーザーでも、ワンクリックのみで予測(予測分析)、クラスタ、参照線、トレンド線などの高度な計算を可視化プロジェクトに追加できます。この方法は、汎用的なアルゴリズムを使用し、さらなる調査が必要な可能性のあるデータの潜在的な異常を強調する上で役立ちます。
次の例は、自動的に生成された予測にグレーの網掛けをした、経時的な収益を示すシンプルなグラフです。将来予想される収益をモニタリングするのは簡単で、このケースでは将来に予測されるパターンが予想と一致しており、異常は見られません。
高度な分析を使用する一般的なロール:
コーディング経験のないビジネス・ユーザー
機械学習を使用した新しいデータ・セットの説明
ビジネスアナリストは、不慣れなデータを使って新しいビジュアル・ストーリーを作成する場合、何から始めればよいのかわからないことがあります。このようなシナリオでは、アナリストはプロフェッショナルとしての経験に基づいて分析を構築することになります。しかし、このアプローチは人間の先入観を生み、不正確な結果につながる可能性があります。より適切なアプローチは、まずMLにすべてのデータを評価させ、その結果を記述的な説明で視覚的に明確化させることです。そして、アナリストはデータの示す内容に基づいて分析を開始します。
次の例では、組み込みのML機能である自動インサイトによって新しいデータ・セットが分析され、アナリストが考えもしなかったようなデータのパターンや傾向が複数見つかりました。これらの結果は、ワンクリックでワークブックのキャンバスに追加されます。これにより、データのストーリーテリングに対する分析ドリブンなアプローチがサポートされ、他の手法では見逃されていた可能性のあるインサイトが提示されます。
コードを必要としないMLモデルをトレーニングする一般的なロール:
ビジネス・ユーザー、市民データ・サイエンティスト
誰もが利用可能な市民データ・サイエンティストによりトレーニングされたモデル
さまざまなタイプの機械学習アルゴリズムとそのデータに精通しているユーザーは、クリック&ドラッグ・スタイルのデータフローを使用して、コードを記述することなく、予測分析を推進するためのカスタム機械学習モデルを構築、調整、テスト、公開することができます。これらの目的に合わせて構築されたMLモデルは、一般的なものよりも特定のユースケースに対してより正確な予測を作成します。
最初のステップは、MLモデルのトレーニングとテストです。そのために、ユーザーは既知の結果を履歴データ・ソースと結び付け、適切なMLアルゴリズムを選択し、この特定のユースケースのためのパラメーターを設定します。その後、モデルを新しいデータに対してテストし、精度を判断します。モデルの予測が許容できるものであれば、モデルをより広範囲に公開することができます。公開されたモデルは、どのユーザーでも新しいデータ・セットに対して実行することができます。モデルを一元的に構築しテストするこの方法は、適切なトレーニングと経験を経た人が信頼できるモデルを構築することを保証します。また、モデルの実行をIT部門に頼る必要がなくなるため、ほとんどのユーザーが簡単にアクセスできるようになります。
コーディング不要のMLモデルをトレーニングする一般的なロール:
市民データ・サイエンティスト、パワー・ユーザー
専門的な機械学習モデルを必要とする特定のユースケースの場合
機械学習にはさまざまな種類があり、分析のための機械学習プラットフォームにすべてを含めることは不可能です。その代わり、拡張可能な分析プラットフォームにより、他のAIサービスとの統合が実現し、分析ユーザーが利用可能なMLサービスの幅が広がります。分析プラットフォームのユーザーは、その機能を提供する別のサービスを使っていることに気づかないこともあります。
たとえば、画像分類がすでに分析プラットフォームに組み込まれていない場合、分析ソリューションに統合することで、ユーザーが新しいデータ・セットを提供し、拡張サービスで処理させ、その結果をダッシュボードに表示させることができます。この例では、Oracle Cloud Infrastructure (OCI) Visionによって分類された画像が、Oracle Analytics Cloudでレンダリングされた結果を示しています。
データ・サイエンス・サービスを統合する一般的なロール:
データ・サイエンティスト、市民データ・サイエンティスト、ITアプリケーション・スペシャリスト
ビジネス・ユーザー向けのデフォルトのML機能
分析アプリケーションは、Oracle Analytics for HCMやAnalytics for ERPなど、ビジネス部門のための専用の分析ですこれらの分析アプリケーションは、上記で説明した機械学習の手法を使用しますが、特定のユースケース向けにデフォルトのMLモデルを提供します。たとえば、ERP分析アプリケーションは、期限内支払い予測や経費異常検出のためのMLをすぐに提供でき、HCM分析アプリケーションは、従業員の離職率予測などのモデルを提供できます。
一般的なユーザー・ロール:
各部門のビジネス・ユーザー、ビジネス・アナリスト
次のステップ
分析に組み込まれた機械学習は、クラウド・コンピューティングにより急速に進化した分析プロセスを拡張するための強力な機能です。機械学習は予測分析を提供し、通常であれば気付かないようなデータのパターン、傾向、相関関係を特定します。MLモデルはまた、意図しない先入観の軽減と、ステークホルダーによる十分な情報に基づく意思決定の実現を支援します。優れた分析プラットフォームは、あらゆるレベルのユーザーにML機能を提供し、技術的な機能に関係なく分析でMLを簡単に利用できるようにします。
最新の分析プラットフォームを使用すれば、MLを使い始めることは想像以上に簡単です。MLは現在の分析プロセスに置き換わるのではなく、より適切なビジネスの意思決定につながる新たな選択肢を提案することで分析プロセスを補強します。